東方の三賢者・第四回(『特別でないただの一日』発売によせて)




何処とも知れぬ時空。闇に浮かぶ薔薇の館・・・。


聖「ごきげんよう。・・あれ?蓉子一人?」
蓉子「ごきげんよう、聖。・・・何を嬉しそうにしてるのよ」
聖「えー、だって。一緒に高等部の学園祭見に行った仲じゃない」
蓉子「だから?」
聖「だから、手だって握るし、キスだって・・」
蓉子「や、やめなさい!(赤面」
聖「まあ、ポルチーニ茸の花言葉は『あなただけを愛してる』だからね」
蓉子「・・・たいがいにしなさい、この『嘘八百の聖』」

江利子「ごきげんよう〜」
蓉子&聖「はい、ごきげんよう」
江利子「なに。今日もお邪魔だった?」
蓉子「だからっ!」
聖「・・江利子さあ。本当に学園祭には来なかったの?」
江利子「なに、いきなり」
聖「いや、今そんな話をしてたから」
江利子「行ってないって。聖には電話で言ったじゃない」
蓉子「こっそり見に来てたんじゃないのー?」
江利子「じゃあ、来てた」
聖「どっちなのよ」
江利子「由乃ちゃんに会ってね、いろいろ焚きつけてた」
蓉子「妹早く作りなさい、って?」
江利子「・・・実は私は、未来から来た人間だったの!って」
蓉子&聖「・・は?」
江利子「令と由乃ちゃんが結ばれないと、私が生まれることができないの、そんなの困るぅ!ってね」
聖「どこかで聞いたような話ねえ」
江利子「なんとか二人をくっつけようと悪戦苦闘するんだけど、私の思いは空回りするばかりでね。そうこうするうち、未来の救世主たる私の誕生を阻もうと、同じく未来から送り込まれた暗殺ロボットとの死闘が・・」
蓉子「・・・江利子ちゃん?(ピクピク」
江利子「ごめんなさいごめんなさい」


蓉子「と、いうことで今回は新刊のネタバレ有りよ。皆さま、留意してね」
聖「なーにを今さら」
蓉子「まあねえ」
江利子「でも、聞いたわよ、蓉子。祥子ったらついに言ったらしいじゃない」
蓉子「・・・ええ。『妹をつくりなさい』ね」
聖「祥子らしいよねー、アレ。たぶん絶対令より先に言いたかったんじゃないかな」
蓉子「例によってあの子の負けず嫌いが発現したようにも見えるわね、確かに」
聖「うん。でも、ある意味祐巳ちゃんに向いてもいたんじゃないかな、負けず嫌い」
江利子「というと?」
聖「祐巳ちゃんのさ、『お姉さま、ご卒業後はどうなさるのですか』と対になっているような気がしてね」
蓉子「相変わらず、意を決しないと肝心なことが出てこない二人なのよね。そこが可愛いのだけど」
江利子「肩のこる話ねえ」

江利子「たまに思うのだけど、祥子と祐巳ちゃんって割と前人未到な関係よねえ」
聖「なにそれ」
江利子「語弊があるけど、祥子って『見知らぬ一年生』を呼び止めて『タイが曲がっていてよ』をやるのには最適な人物だと思うのよ」
蓉子「・・・・」
江利子「仮にリリアンが共学だったとして、一年生の祐巳ちゃんはかねてからあこがれていた小笠原先輩(男)に声をかけられるところからスタートする、として」
聖「ふむふむ」
江利子「その後偶然がつづいて、小笠原先輩に生徒会にスカウトされる主人公祐巳ちゃん。まさに天にも昇る気持ちなのよ。けれど、それは学園祭の劇の主役を降りたいがための小笠原先輩の計算によるものだった、という事実にだんだん気づいていく」
蓉子「一方、祐巳ちゃんにはかねてよりの幼馴染み、同級生の島津くん(男)がいて、彼はそんな祐巳ちゃんの様子を適切な忠告を入れながら見守っている・・・と」
江利子「そうそう!蓉子わかってるじゃない。・・島津くんのお節介を最初はうとましく思っている祐巳ちゃんだけど、決定的な小笠原先輩の真意に気づいて、泣き濡れる雨の夜、心配して来てくれた島津くんの思いに、はじめて気がつく・・・と」
聖「そうね。凡百の・・・というと言葉は悪いけど、話の展開としてはその方が一般的かもしれないわね」
江利子「ところが、そうならなかったのよ」
蓉子「『ハンサムで意地の悪い先輩』にも人間的厚みがあって、愛情もあって、わかりあえる部分もある。単純な憧れだと思っていても、本人も気づかない根源的な理由があるのかもしれない。・・見ようによっては、壮大なパターン破りをやってのけているのかもしれないわね、あの二人」
江利子「ええ。スリリングだわー、うちの令にもあれだけの緊張感を期待できればねえ」
聖「いや、黄薔薇もこれからでしょ」
江利子「それはともかく、聖。今の白の二人落ち着きすぎよ、かつて『リリアンの悪夢』とまで言われた白の伝統はどこいったのよ」
聖「失礼なっ!なによそれ」


聖「と、いうことで今回もとりとめもなく・・・」
蓉子「今回のテーマは、なんだったのかしらね」
江利子「由祐バンザイ?」
蓉子&聖「・・・違うんじゃない?」
・・・




おしまい

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